2021年4月25日 復活節第4主日 B年
(使徒4・8-12)、(Ⅰヨハネ3・1-2)、(ヨハネ10・11-18)
良い羊飼い
一つの実話を心に納め、それから今日の福音を考えましょう。これは、日本で働いていたイエズス会の故アギレ・ゴメス修道士さんの体験談です。
彼はスペイン生まれで、少年時代に、父親の羊の番をしていました。羊は羊飼いに導かれて群れを成して山々へ行き、夜になると柵の中に戻ります。その時、羊飼いは羊の数を数えます。彼は、姉さんと一緒にその仕事をしていました。ある晩、群れの1匹だけが戻りませんでした。子羊だったので余計に心配でした。スペインでは、羊が生まれると名前をつけます。その子羊の名前はブルネットでした。ブルネットがいない。どこへ行ったのでしょうか? 次の日もその次の日も探しましたが見つかりません。1年間、姉と弟は、毎日、ブルネットはどこへ行ってしまったのかと話し合いながら探していました。狼はスペインの山にはいないので、羊はどこかで生きているはずです。1年後のその日も、二人は朝早く家を出て、山々を歩き回ってブルネットを探しました。峠に上って向こうの谷を見ると、羊の群れが見えました。別の群れですが、ブルネットが迷い込んでいるかもしれません。
羊飼いでない私達には、全ての羊が同じ顔に見えますが、羊飼いは自分の羊が分かります。姉さんの目は鋭かった。「あれ、あそこよ! ブルネットよ!」と叫びました。大きく成長していましたが、ちゃんとブルネットだと分かりました。それで弟のゴメスさんが、大声で「お-い」と呼びました。イエス様がおっしゃった通りになりました。羊は羊飼いの声が分かるのです。他の羊は知らん顔をしていましたが、ブルネットは頭を上げて、「メェー」と鳴き、急いで走ってきました。姉と弟は喜んでブルネットを家に連れて帰りました。
以上の実話を心に止めながら、主の語りかけに心の耳を傾けましょう。良い羊飼いについて三つのことが語られました。
◎ 今日の短い話の中で、主は「命を捨てる」と4回も言われまし
た。最初の2回は、「羊のために命を捨てる」と仰せになり、後の2回では、誰かによって命を奪われるのではなく、「自分で命を捨てる」「自発的に命を捨てる」と言われました。つまり、私達を愛するがゆえに、自ら進んで命を捨てて、罪の贖いを成し遂げ、主を信じる全ての人を神の子として永遠に生きさせて下さいます。
◎ 羊飼いと羊は互いに知っており、ブルネットのように羊は自分の羊飼いの声にだけ聞き従います。聖書が言う「知る」とは、「人格的な愛による一致と交わりのうちに生きる」ことです(ヨハネ17・3参照)。私達が良い羊飼いであるイエス・キリストの声に聞き従うなら、真の愛のうちに生きて、必ず神の国に入らせていただけます。
◎ 三位一体の神は、人類が罪と悪魔という狼に襲われて永遠に滅
びそうになっているのを憐れんで、『御子が人となり、命を捨てて羊を救う』ことを決定し、実行して下さいました。この狼は世の終わりまで暗躍し続けます。狼から私達を救い出せるのは主イエスだけです。良い羊飼いである主から決して離れ去らないようにしましょう。
天の父よ、あなたの独り子を全人類の救い主として送って下さったことを感謝します。私達が主イエス・キリストから決して離れ去らないよう、常に守り導いて下さい。