(シラ15・15-20)、(Ⅰコリント2・6-10)、(マタイ5・17-37)
「私が来たのは、律法や預言者の教えを廃止するためではなく、完成するためである。」こう断言された主は、今日の福音の中で「殺すな」、「姦淫するな」、「偽りの誓いを立てるな」という三つの掟を神の権威をもって完成されました。
①「殺すな」という掟を取り上げて、私たちが「兄弟に腹を立てて、『ばか』とか『愚か者』とか言うことを厳しく禁じ、また、「祭壇に供え物を献げて礼拝しようとするとき、兄弟が自分に反感を抱いていることを思い出したなら、先ず仲直りをしに行きなさい」と言われました。これが、「殺すな」という掟に関する主のお望みです。
②「姦婬するな」という掟を取り上げて、邪な思いすらも厳しく咎められました。「みだらな思いで女を見る者は誰でも、すでに心の中でその女を犯したのである」と言い、貞潔に関して、「目や手があなたを躓かせるなら、それをえぐり出し、切り取って、捨ててしまいなさい」と命じられます。主のお望みは、躓いてから私たちの目や手を捨てることではなく、極めて大きい犠牲を払わねばならないとしても、躓かないよう警戒することです。貞潔でありたいなら、決して危険に近づかないようにすべきです。
③「偽りの誓いを立てるな」という掟に関する主のお望みは、私たちが常に誠実であり、『はい』と言ったことはいつでも必ず『はい』であり、『いいえ』と言ったことはいつでも必ず『いいえ』であって、決して嘘を言わないことです。主は、「自分の言葉を信じさせようとして、誓いを乱用してはならない」と命じられました。
以上の三つを、世界のキリスト者が主のお望みどおりに生きるなら、人間社会はどんなに清められ、気高いものとなることでしょうか。
このように、一つ一つの律法と預言者の教えを完成される主は、最も重要な第一の掟と第二の掟について語り、「律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている」と仰せになりました(マタ22・34-40)。ですから、律法全体の教えを悟り実践したいなら、この二つの最も重要な掟の精神を悟り実践すればよいわけです。
この愛の掟について、聖フランシスコは次のように祈ります。
第一の掟について 「天の父よ、あなたを常に憧れ望むことによって心を尽くしてあなたを愛し、あなたを常に思い巡らすことによって思いを尽くしてあなたを愛し、私たちの考えの全てをあなたに向け、万事においてあなたの栄光を求めることによって、精神を尽くしてあなたを愛し、私たちの霊魂と体の全ての力と感覚をあなたへの愛の奉仕のためだけに用い、それ以外のどんなことにも用いないことによって力を尽くしてあなたを愛せますように」と。
第二の掟について 聖人はこう祈ります。「力を尽くして隣人を皆あなたへの愛に導き、他人の幸福を自分のことのように喜び、他人の不幸に同情し、また、どんな人をも決して傷つけないことによって、隣人を自分のように愛せますように」(聖フランシスコの小品集、117-118頁)。
天の父よ、あなたが望まれるのは愛だけです。あなたへの愛・隣人への愛を誠実に生きることが出来るよう、助けて下さい。